創業の背景
GRASグループをがスタートした2005年は、インターネットの人口普及率が70%を超えた頃。ADSLを使ってブロードバンドに接続し、PCやフィーチャーフォン(ガラケー)でネットサービスを利用していた時代です。インフラの進化により「安い・速い」インターネットが徐々に実現し、ネット上のコンテンツやサービスに大きな変化が起きつつありました。一部の人のものだったインターネットが、誰もが使う身近なツールとして、新しい文化を形成し始めていたのです。
創業者の辻村は秋田県出身で、大学進学をきっかけに京都での生活を始めました。新しい環境でそれまで秋田で接することがなかった帰国子女や留学生、社会人学生などと出会い、多様な背景や自分との違いに驚かされました。生まれ育った地域が異なれば、身に着けるものや住んでいる部屋、ライフスタイルなども異なってくるもの。同じ学校に通う同級生であっても、生まれ育った環境の違いだけで「選択肢の差」が生まれていることに気づき、悔しい気持ちや、うらやましい気持ちを抱くという経験は、多くの人と同じだったかもしれません。
しかし生まれ育ちが及ぼす影響は、年齢を重ねるごとに小さくなっていきます。今日何をするのか、10年後の自分に向かってどんな努力をするのかは、自分の意志で選び自らの決断で行動を起こすことができます。「後天的な努力」を通じて、地方で育った普通の大学生も経営者になりビジネスをすることができる。人生においては自分の決断と選択の重要性が年々増していくといえるでしょう。
創業の経緯
辻村も大学入学時にはまだ明確な目標は持っておらず、将来何をすべきかで悩む普通の学生でした。様々なアルバイトをしながらビジネスの世界をのぞき、接した経営者の方々から刺激を受けて、自分でビジネスの仕組みを作り新しい価値を生み出していきたいと思うようになったのです。
大学卒業後すぐに創業メンバーと起業。メディア運営など複数のサービスを立ち上げては失敗を繰り返す過程で、総合的な辞書サービスがないという気づきとオンライン辞書サービスの着想を得ました。ベースにあった「人の学びと成長につながるビジネスをやりたい」という思いとも合致し、オンライン辞書Weblioがスタートしました。
事業の展開
創業時には辞書サービスの競合は40以上あり、Weblio辞書は45番目の参入でした。しかし大手サービスのほとんどが電子辞書のネット版といえるもので、ターゲットユーザーは学生がメイン。インターネットの普及とともに、ビジネスパーソンが仕事のために検索するという行動が増えており、社会人向けの辞書コンテンツへのニーズが潜在的に高まっていたにも関わらず、それに応えられるサービスがなかったのです。そうした背景を元に、社会人が仕事に必要な情報を得られるサービスとしてWeblio辞書がスタートしました。
創業まもない時期で資金やリソースには限りがある環境。3か月で5千本の記事を書いたり、1日1件のペースで提携先との契約をクロージングしたりと、1分1秒に全力投球してどこにも負けないほどのコンテンツ量をそろえ、大手出版社や大手ポータルサイトをしのぐ程のサービスへ成長させることができたのです。また、社会に必要とされているサービスを自分たちの手でつくり、そのサービスを通じて誰かの幸福のために貢献できているという、何にも代えがたい実感を得た経験でもあります。
2015年に学校向けのオンライン英会話サービスの提供を開始しましたが、こちらも当時30社くらいの競合がひしめく状況。しかし個人向けサービスをそのまま学校に提供するものはあっても、学校向けにシステムを作って提供しているものはありませんでした。ここにも潜在的なニーズがありながら満たされていないポジションがあったのです。徹底的なユーザーファーストによるサービス改善を繰り返した結果、多くの学校様に導入していただき、現在では辞書サービスと並ぶ事業となっています。
今やオンライン辞書はあって当たり前の存在、多くの人の知的好奇心を支えるインフラとなりました。オンライン英会話は学校の授業で活用され、地域や社会情勢に左右されることなく、生徒の皆さんに外国語を話す喜びや異文化に触れる体験を提供しています。
今後のビジョン
普通の学生が集まって起業したGRASグループは、失敗を幾度繰り返してもあきらめず、実直に努力し続けてきました。何度も厳しい状況に陥っても、道端の草が重いアスファルトを持ち上げるように、困難に打ち勝つことができたのです。生まれつきの才能や恵まれた環境がなくとも、後天的な努力によって大きな成果をあげることができます。どんなときでもあきらめない、常に実直にやりぬく姿勢は、今でもGRASグループの企業文化として生きています。
創業時からGRASグループは永く続く会社でありたいと強く願っています。個人に与えられた命は短くとも、企業は長い時間をかけ多くの人の手を借りながら、社会的使命を果たすことができます。50年100年と世代を越えて会社の核を受け継ぎ、社会に価値を提供し続ける組織でありたい。これからも社会のインフラとなるようなサービスを提供し、永く続く偉大な企業へと歩んでまいります。
GRASグループ株式会社 代表取締役社長辻村 直也